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静的平衡感覚の閉眼片足立ちは、全ての年齢にわたって低く、特に漁船で低くなっている。しかし、動的な平衡感覚のその揚足踏みは、今回測定した陸上勤務者よりも良い値であった。
敏捷性の反復横跳びは、35歳から直線的に低下し、50歳以上では25%程度低下している。この低下の傾向はO般と同様であるが、船員全体を通して一般より低くなっている。

 

(4)体力調査結果のまとめ

 

加齢によって低下する心身機能のうち、図2(6ぺ一ジ)の項目の丸印を付した項目の測定を555名の船員と38名の陸上勤務者について行った(表1、参考I一表26−1,2)。その結果を総合的に評価すると以下のとおりである。脊柱前屈と平衡機能以外は一般とほぼ同じような傾向を示している。脊椎前屈についても、それと同様の測定項目である立位体前屈が、一般と同様の低下傾向を示している。
しかし、運動調節能と動作速度に関する反復横跳びは、年齢による低下の傾向で一般と同様であったが、船員全体で低い傾向にある。また、平衡機能に関する閉眼片足立ちも、船員全体で低い傾向にある。ただし、平衡機能のうち動的平衡機能であるその揚足踏みは、今回測定の陸上勤務者と比較して低い値ではなかった。
筋作業持久能にかかわる腕立伏臥腕屈曲は、船員全体としてやや高い水準にある。
したがって、船員の加齢による体力の低下は一般と同様であるが、船員全体として、上肢の筋持久力は良いが、下肢を使う動作が一般と比較して低く、動的な平衡感覚は良いとしても静的な平衡感覚は低いという特徴がある。
これらの傾向は、上肢を使う仕事が多い反面、船員の作業環境が下肢を使って動き回る機会が少なく、また、絶えず動揺しているということによっている可能性がある。
災害防止に当たっては、体力の加齢による一般的低下と、この様な環境要因による低下に配慮する必要があると思われる。

 

 

 

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